敗者のゲーム Winning the Loser's Game
趣旨は極めて単純で、以下を具体的なデータを元にいろいろな角度から繰り返し説明しています。
# 人より努力すれば報われると教えられた我々からすると面白みのない結論です。
<事実>
・優秀で真面目な多数のプロのファンドマネージャが運用機関に入社し、機関投資家として活躍している。
・市場(=市場平均)を上回ろうとする機関投資家の大多数は市場平均に負けている。
理由) 市場取引の90%超が機関投資家の取引である。(しかも最大手50社が全市場取引の50%を占める)
そのため、機関投資家そのものが「市場」であり、顧問料、売買手数料その他コスト分、機関投資家は自分自身に勝つことはできない。
<投資家への提案>
・「勝者のゲーム」ではなく、「敗者のゲーム」を行うべき。
・具体的には市場に勝とうとする(一生懸命努力するほどそのコスト分リターンが下がる)のではなく、市場を忠実に反映する(なるべく低コストの)インデックスファンドに投資すべき。
⇒ 「個人の目的とリスク許容度に適した、十分に分散された、コストの低い投資計画を立てることが重要」
<市場平均を上回りたい人へのメッセージ>
・それでも市場に勝とうとする場合、「銘柄選択」や「市場タイミング」を他の人よりうまく見切る力が必要。
ただ、巨額の資金と優秀な人材を抱え、瞬時に最新情報を得られる機関投資家ですら、市場を上回るのは極めて困難である。
市場に勝つには、インデックス投資よりも、①高い売買コスト、②(特定セクターや特定国、特定銘柄へ偏重したポートフォリオを保有するため)高いリスク(ぶれ)を受け入れたうえで、市場平均に勝つための運が必要。
・あなたが、投資の「ドリーム・チーム」を作ることにした場合、誰を選ぶか?
バフェット、ピーター・リンチ、フィデリティやバンガードのプロ、世界中のヘッジファンドのプロ、メリルリンチやGS、モルガン・スタンレー他、世界中の著名ファンドマネージャ、新興国市場に特化するトップファンドマネージャもスタッフに入ってもらうことで、「ドリーム・チーム」を実現できる。
その場合、その「ドリーム・チーム」の運用結果は、市場の動きを模倣する「インデックスファンド」と同じになる。
市場の動きはプロの投資判断結果をリアルタイムで反映する。
実際に「ドリーム・チーム」を結成するには、巨額の資金が必要で、しかもスタッフに支払う給料だけでも途方もないコストがかかるので、おそらくインデックスファンドの信託報酬どころではないコストがかかり、この「ドリーム・チーム」ですら、市場平均を下回りそうな予感がしますが。。
そのため、インデックスファンドは、市場平均で良いとする人向けではなく、「ドリーム・チーム」の成果を求める人こそが投資すべきという結論が大変シンプルで美しいです。
私の投資スタンスを決定する上で、この箇所の記述が多いに影響していると思います。
この本は、さすがに有名な本であるだけに何度読んでも新たな発見があります。
何度読んでもいいものは良いですね。未読の方にはぜひともお勧めしたい本です。
[2010.12.27追記]
当ブログ経由で購入いただいた本(2010年度)
[2011.08.25追記] 第5版のレビュー記事を書きました。
敗者のゲーム -金融危機を超えて(チャールズ・エリス著)
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