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為替ヘッジにかかる為替ヘッジコスト 金利差だけでは決まらないコストの仕組み

為替ヘッジ

日本以外の外貨建て資産に投資する場合に、切って離せないのが、為替リスク(為替変動によるブレ)です。
為替リスクをとって外貨に投資したことによる追加の期待リターンは理論上ゼロなのに、円高になると外貨建て資産の円換算額が目減りし、円安になると逆に円換算額が増えるというブレが悩ましいところです。

ただ、その為替リスクを軽減できる「為替ヘッジ」という手法があります。
為替ヘッジと、それに伴う為替ヘッジコストについて以下にて説明します。



為替ヘッジとは

 海外投資と為替の話 | 野村アセットマネジメント (PDF)


NoHedge-Hedge.jpg

上図は、米ドル建てファンドに投資した場合の例です。

1米ドル=100円の時、
上段の「為替ヘッジをしない場合」において、投資家が100万円でこのファンドを買うと、運用会社は①100万円を売って、②1万米ドルを買い、ファンドの投資対象資産(株式や債券など)を購入します。

当然、為替変動の影響で円高も円安ももろに効いてきます。


下段は、「為替ヘッジをする場合」です。
運用会社が①100万円を売って、②1万米ドルを買い、ファンドの投資対象資産(株式や債券など)を購入する以外に、為替ヘッジのために、例えば1年後の為替レートに無関係に、1年後に、1米ドル=〇〇円で③米ドル円を売って、④円を買うという為替予約取引を行います。



為替予約には、理論上は両通貨の金利差が為替ヘッジコストとしてかかる

ここで○○円がもし現レートの100円であれば、為替変動の影響なしに米ドル資産に投資できる夢のフリーランチが実現できます。
実際は、日本円と米ドルの金利要因で○○円=100円にはなりません。

例えば、現在1米ドル=100円、円の金利が1%、米ドルの金利が3%だとします。
1年後に円は100万円が101万円、米ドルは10,000米ドルが10,300米ドルに増えています。
このように、交換する2通貨に金利差がある場合、金利が高い通貨で運用していた方が得になるので、現在の為替で1年後に交換する約束をしたのでは、有利・不利が生まれます。



HedgeCalc.jpg

1年後に有利・不利にならないように、101万円と10,300米ドルが等しくなる為替を計算すればよいことになります。つまり、101万円÷10,300米ドル=約98円で予約すれば有利・不利がなくなります。
現在の1米ドル=100円と、予約した1米ドル=約98円の差となる約2円分が、為替ヘッジコストとなります。



為替ヘッジ付きのドル建てファンドの投資とは、通貨としては円を対価として米ドルを調達し、そのドルを運用することになります。

上の説明のように、理論的には、高金利通貨(米ドル)を売って低金利通貨(日本円)を買う為替取引側は、両通貨の金利差分(注:後述のように「理論上は」金利差分)を「為替ヘッジコスト」として負担することで、為替リスクを軽減することになります。

為替ヘッジコストは、信託報酬や実質コストには含まれておらず、業者が取る費用でもありません。
為替予約が成立するためのオペレーションコストです。

仮に日本円の金利が米ドルの金利より高い場合は、逆に金利差分を受け取るため、為替プレミアムと呼ばれます。




為替ヘッジコストは、実際は金利差以外に需給要因で変化します

為替予約取引での資金調達時は、1ヵ月LIBOR(ライボー:London Interbank Offered Rate)や3ヵ月LIBORなどの短期の銀行間平均貸出金利が使われます。1ヵ月LIBOR、3ヵ月LIBORは米ドル需給要因や市場関係者の思惑により変化し、為替予約を1ヵ月、3ヵ月のどれにするかは、為替ヘッジを行う運用者によって異なります。


米ドル円のヘッジコストの状況について | 大和投資信託 (PDF)

為替ヘッジにかかるコストは、理論的には「外貨建短期金利と自国通貨建短期金利の差」となりますが、当該通貨の金利見通しや需給などの状況によっては、米ドルの調達に対する上乗せ金利(ベーシス)が発生し、為替ヘッジコストは金利差と乖離します。



以下のように、米ドルの資金調達には、8月時点で、1ヵ月LIBORは年0.5%、3ヵ月LIBORは年0.8%と、金利差以上の為替ヘッジコストがかかっています。

USD-LIBOR.jpg



足もとの為替ヘッジコスト(対米ドル)と今後の見通し | 三井住友トラスト・アセットマネジメント (PDF)

上記レポートによると先月10月の米ドルの為替ヘッジコストは実勢値として年1.27%かかっているという報告もあります。
(豪ドル等、米ドルより金利の高い通貨の為替ヘッジはもっと高く、豪ドルで年4%の為替ヘッジコストも平気であります。)

このように、為替ヘッジコストは、単純に金利差ではなく、需給要因によるLIBORの変動で思わぬ高いコスト負担となることもあります。

このややこしい仕組みについては、水瀬ケンイチさんも記事を書かれています。
 為替ヘッジ付き米国債もマイナス利回り。為替ヘッジも万能ではない | 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)


為替ヘッジコストについての詳細は上で書いた通りですが、為替ヘッジ付きのファンドは、為替変動が抑えられる分、「リスクも下がるが、期待リターンも為替ヘッジコスト分下がった資産クラス」として考えた方がよさそうです。




為替ヘッジコストについてのまとめ

言いたかったことは以下の通りです。

  • 為替ヘッジコストは通貨の金利差だけではなく、需給要因その他で変化する。

  • 為替ヘッジコストは、信託報酬にも実質コストにも含まれておらず、ファンドの基準価額に織り込まれて入っている。

  • 為替ヘッジ付ファンドは、リスクも低いが、期待リターンも為替ヘッジコスト分低い、別の資産クラスのファンドと考えた方がよさそう。


たわらノーロード 先進国株式<為替ヘッジあり>、たわらノーロード 先進国債券<為替ヘッジあり>のように信託報酬0.2%前半の低コストの為替ヘッジ付きファンドも登場しており、分散投資の一環としてうまく利用するのはありだと思います。

ただ、為替ヘッジ付きファンドは、「無条件に為替リスクから解放されるもの」でもましてや「リターンは下がらずリスクだけ下がる夢のツール」ではありません。

私含め、ブロガーの皆さんのアセットアロケーションでは、為替ヘッジ付きファンドには投資していない場合が多いです。
これは、高金利の外貨が儲かると思っているわけでなく、この為替ヘッジコストによる期待リターン低下を嫌って、為替の波にもまれることを覚悟した上でのアセットアロケーションを構築しているためです。
(私の場合は、資産全体の為替リスクは、無リスク資産を50%にすることで低減しています。)

ただ、為替ヘッジコストがかかるからといって、為替ヘッジ付きファンドは不要なものとは限りません。
為替ヘッジコストがかかることを承知で、為替リスクを軽減したファンドに投資してもよい場合も当然あり、個々のリスク許容度やアセットアロケーションにより必要かどうか異なります。

為替ヘッジ付きファンドを利用する、しないのどちらにしろ、中身を理解した上で決めていくべきと思っています。


<続記事にて機関投資家の為替ヘッジ付き資産の利用事例、私が考える為替ヘッジの使い方を書く予定です。>


関連記事

 [2016.11.08追記]
 為替ヘッジ付き資産を年金基金はどの程度組み入れているかの調査レポート紹介

 [2016.11.12追記]
 為替ヘッジ付きファンドのベンチマーク(指数)の算出は、為替ヘッジコストとしてLIBORを使用

 [2016.12.13追記]
 米ドル円、ユーロ円、豪ドル円の直近の為替ヘッジコストを確認

 [2017.01.09追記]
 Funds-iシリーズの外国株式、外国債券等為替ヘッジ付きファンドの為替ヘッジコスト
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