REITファンドの毎月分配金でカーローンを支払うというトンデモ戦略

以前私の取材記事が掲載された 日経ヴェリタス2012年6月24日号 のコラム「七転び八起き」 に「ファンド分配金でカーローン支払い」というトンデモ内容が載っていました。
車を購入した際に、当初は現金で払う予定だったが、カーローンは年2.5%(月々の支払額は約2万8000円)という低金利であることを知ったとのこと。
ファンドを買って、その分配金をカーローンの支払いに充当する戦略を考えた。
現金払いの方がスッキリはするが、時には長期的な視野も必要だ。
2万8000円全額は無理だが近い水準の分配金を確保できるREITファンドを購入。
海外ものは、三井住友アセットマネジメントの、その名も「世界の大家さん」で世界10カ国以上のREITに投資する。「僕の借金を世界の人が賃料を通じて払ってくれてるんだな」と思えて、楽しい。

Debt Payment / Images_of_Money
コラムの限られた内容から判断する限り、根本的に分配金への理解が不足しています。
「僕の借金を世界の人が賃料を通じて払ってくれてるんだな」という認識は間違いです。
毎月2万8000円近い分配金は、単なる自己資産の取り崩しです。
元本から確実にその分引かれるだけでなく、利益が出ている時(普通分配)は、税金も引かれます。
それなら、貯金からローンを払った方がはるかに得です。
また、現金があるのなら、カーローンを利用せずにキャッシュで車を買うのが一番確実です。
「世界の大家さん」のリターンが良く、結果としてカードローンを組んだ場合よりも得する場合もあります。
その場合は(同じ資産クラスであれば)、低コストの世界リートインデックスファンドを選ぶ方がより期待リターンが高くなります。
三井住友・グローバル・リート・オープン(愛称:世界の大家さん) は信託報酬1.6695%と高コストのアクティブファンドです。
毎月80円の分配を出していますが、分配金がそのまま利益ではないことは言うまでもありません。
ネタのようですが、取材されている個人投資家は、副職でFP活動をされているとのことでびっくりです。
こんなFPの提案内容はそら恐ろしいことになっていそうです。
日経ヴェリタスは、本内容について肯定も否定も書いていませんが、おかしな点はおかしいと記載するべきと考えます。
[2012.08.25追記]
赤字破綻家庭にローン返済でなく死亡保険増額を勧めるFP
住宅ローン返済せず、その資金で年3%の資産運用を勧めるFP
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